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レーガンとサッチャー 新自由主義のリーダーシップ [著]ニコラス・ワプショット

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2014年04月27日

[ジャンル]歴史 政治

表紙画像

■20世紀史書き換えた信頼関係

 20世紀の人類史ではソ連の社会主義体制の崩壊がもっとも特筆されることの一つだろう。その崩壊の最終段階で主要な役割を果たしたのが、米国のレーガン大統領と英国のサッチャー首相である。それぞれ8年と11年にわたってそのポストにあり、ふたりの確固とした信頼関係が人類史を書き換えたともいいうる。
 著者は英国のジャーナリストで、ふたりの出自から出身家庭、学生生活、その性格が形成される幾つものエピソードを集め、そこに共通点を重ね合わせていく。ふたりとも決して恵まれた階層の出身ではなかったにせよ、父親の保守的な性格(とくに、サッチャーの父親は高潔の人だった)、キリスト教への強い信仰心などの共通点があったと説く。ふたりとも政治の道に進んでいく強い意思があったことも認(したた)める。ただ政治家を目ざす前にレーガンは映画俳優として二流映画に出る一方、マッカーシーの「赤狩り」では下院非米活動調査委員会に協力した前歴を持つ。俳優という立場でゼネラル・エレクトリック社の工場を回って講演を続けたことが政治へ入るきっかけになったという。
 サッチャーにしてもオックスフォードを出て政治家を目ざすも、その立場は「中産階級または下層寄りのごく一部の階層しか代表」していないと見られ、中産階級が大切にしている価値観を私は持っていると反論を続けた。
 ふたりは最高指導者になる前に、保守思想家として会っているが、お互いにその気質や信条に信頼感を持った。とくに市場重視の新自由主義経済政策は、米英不可分の関係をつくり、国際情勢の折々の状況(対ソ政策、フォークランド紛争など)で協力、牽制(けんせい)があった。ソ連にゴルバチョフが登場してからの三者には、人間的信頼があり、それが歴史を動かした要因でもある。
 著者の筆は、レーガンとサッチャーを通して20世紀の米英指導者論の原型を描いた。
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 久保恵美子訳、新潮選書・1944円/Nicholas Wapshott 52年生まれ。著書に『ケインズかハイエクか』。

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