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私に似た人 [著]貫井徳郎

[評者]

[掲載]2014年05月04日

[ジャンル]文芸

表紙画像

 あちらこちらで小さなテロが起きる。指導者がいるわけでも組織があるわけでもないのに、いつのまにか日常化したテロを人々は「小口テロ」と呼ぶようになった。その真相を、まるで薄皮を1枚1枚はいでいくように10人の登場人物たちの「場合」を描くことで浮き彫りにする。
 緻密(ちみつ)なトリックを得意とする作者だが、あえてトリックを使わずに巧みな構成力で白日のもとにさらす手法は、日本推理作家協会賞受賞作『乱反射』と同様だ。今回、あぶり出されるのは現代日本の抱える「格差」や「閉塞(へいそく)感」、そして、ワーキングプアと呼ばれる人たちの行き場のない「憤り」だ。ネット上の群像劇に現代日本の縮図をみる思いがする。
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 朝日新聞出版・1944円

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