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大正ロマンの真実 [著]三好徹

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2014年05月04日

[ジャンル]歴史

表紙画像

■時代に躍った人びとの姿を活写

 大正時代は15年、その間に起こった政治、軍事、文化に関わる事件・事象を選び、そこに躍った人びとの姿が活写される。大正の空気(大正ロマンとか大正デモクラシーとか称されるが)は「人」の生き方で形づくられたとわかる。
 伯爵夫人とお抱え運転手の心中に松井須磨子の島村抱月後追い自殺、波多野秋子と有島武郎の心中が重ね合わされる。浅原健三と八幡製鉄のストライキの稿では、大杉栄周辺にも筆は延びる。シーメンス事件を論じつつ海軍内部の人脈図が浮かびあがる。原敬と政治指導者を語ると、そこに歌人下田歌子が顔をだす。朴烈と金子文子の写真の謎を解く鍵を握る立松判事の生き方など、個々の挿話が練達の筆で巧みに構成されている。
 明治期に乃木希典の信頼を得た新聞記者大庭景秋(おおばかげあき)は、大正時代には社会主義に関心を持ち、やがてその身は歴史の闇に消える。桂太郎の愛妾(あいしょう)お鯉(こい)の昭和23年まで生きての自慢話など、昭和へは多様な姿が託された。
    ◇
 原書房・2160円

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