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日本を再発明する―時間、空間、ネーション [著]テッサ・モーリス=スズキ

[評者]赤坂真理(作家)

[掲載]2014年05月18日

[ジャンル]政治 社会

表紙画像

■虚をつく「発明」、明治期の国家

 すぐれた外国人研究者による日本研究には、ひとことで、鮮やかに本質をつき、同時に、日本人の虚をつくものがある。この場合、それがすでにタイトルだったので、さらに衝撃的だった。
 なぜって? 「日本を『再発明』する」というからには、日本は一度「発明」されているからである! いつ? 明治に。明治国家の樹立は、「発明」である、という視点を、私を含めて多くの日本人はとらないし、そう歴史の授業で習いもしない。しかし実のところ、ほとんど無理に近い「発明」だ。このことが、多くのひずみを生み出して今日にも影響していると思えてならない。国家と神と政治と軍隊を一本化した、その国家がなしたことを説明するのはむずかしい。今でも外交でつまずいたりするとき、根底にはそれがないだろうか。硬直してしまった「発明」を解きほぐすヒントが、本書にある。
 ネーション(国民)とは、人種とも自然とも文化とも空間とも異なる。この定義自体、西欧の発明である。この発明も大きなひずみを生んだ。日本の場合は、海で隔絶された地理条件と、移動の自由が少なかったことから、その境界は自然のもののように見える。が、その国境線もやはり「近年の発明」であり「現在係争中のところもある」のである。
 一面で、やすやすとできたように見える国民が、その半面で支払わなければならない代価について語るのは、むずかしい。しかしむずかしいからこそ、語ってみないとさらなる混迷を生む。「日本」をかたちづくってきたことを縦横無尽にキーワードで語り、それを解きほぐそうとする。中でも出色は「ジェンダー」だろう。日本ではなぜか多くのことがジェンダーじみた論になり、天皇制なども、なぜかその本質が性別であるかのような転倒が生まれる。繰り返し現れるパターンはどこから来るのか? 現在必読の書。
    ◇
 伊藤茂訳、以文社・3024円/Tessa Morris−Suzuki 英国生まれ。豪国立大学教授。『北朝鮮へのエクソダス』

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