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ロマ 生きている炎―少数民族の暮らしと言語 [著]ロナルド・リー

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2014年05月18日

[ジャンル]文芸

表紙画像

■迫害を受け、生身で社会と格闘

 「現在、日本などごく少数の国を除いて、ロマは世界中の国々に実在する。われわれの音楽や文化も理解されるようになった」
 と著者はこの日本語版への「はしがき」で書く。今やロマはそれぞれの国でその「主流社会に統合されつつある」というのだ。かつてジプシーと他称され、祖国を持たない民族との偏見も残っているとはいえ、1960年代、70年代よりは状況は改善されている。
 原書の初版は71年だが、ロマの一人としてどう生きたか、著者の自伝風の読み物である。カナダ社会にあってさまざまな迫害や蔑視を受け、ロマの人々は生身で社会と格闘する。盗み、売春、暴力があり、カナダ社会の変革を求める人権闘争がある。著者はその現実の中で、ロマ固有の文化、伝統、その誇りを、さらにその言語体系を辞典にすべく使命感を持ち続ける。
 「ロマがいるところには自由がある」とのロマの格言が、現実社会を裁断する刀との感がしてくる。
    ◇
 金子マーティン訳、彩流社・3024円

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