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アメリカ医療制度の政治史 [著]山岸敬和

[評者]諸富徹(京都大学教授・経済学)

[掲載]2014年06月01日

[ジャンル]社会

表紙画像

■なぜ公的保険制度ができないか

 オバマ政権が2010年に、米国にとって初の国民皆保険制度を創設したのは画期的だ。だがそれは、日本のような公的保険制度ではない。米国社会に深く根づいた民間保険制度を前提とし、個人にその加入を義務づけるものだ。皆保険実現のため、低・中所得者には財政支援が行われ、民間保険業者には、既往症を理由とした加入拒否が禁じられる。抜本改革を避けた穏当な改革だが、激しい政治的対立が引き起こされた。なぜ米国で公的保険制度は導入できないのか。
 本書は20世紀米国の医療制度発展史を辿(たど)ることで、この問いに回答を与える。ルーズベルト、トルーマン両政権による公的保険制度導入の挫折後、民間保険制度が浸透、政府介入を嫌う医師会がそれを支持し、米国医療制度の方向性が決定づけられたことが、丁寧に描かれている。同テーマの好著、天野拓『オバマの医療改革』(勁草書房)と併読することで、より理解が深まるだろう。
    ◇
名古屋大学出版会・4860円


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