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おいしそうな草 [著]蜂飼耳

[評者]水無田気流(詩人・社会学者)

[掲載]2014年06月08日

[ジャンル]人文

表紙画像

■言葉に内在する力を見つめる

 言葉は文字通り言の葉。豊かで目に鮮やかな表象が、「葉」の字を当てさせたのだろうか。だが、筆者はあえて「草」を選ぶ。その低い視線は、通常視界に入らないものを、丹念にとらえて見せてくれる。引用される言葉は、八木重吉、西脇順三郎、中原中也、高橋睦郎、石原吉郎、左川ちかなど、百花繚乱(ひゃっかりょうらん)。だが、単なる解説とは一線を画す。
 圧巻は、表題となった「おいしそうな草」の一節。鈴木志郎康(しろうやす)の詩「雑草の記憶」を引き、言葉なき雑草が「私」を通して言葉になろうとする刹那(せつな)を切り取る。そのとき「私」が雑草になりかけ、言葉がそれをおしとどめる、とも。「言葉が、人間とその他のものを区分して、限られた生を言葉の灯(あか)りで生きるようにと、うながす」が、「牛や馬、羊ならば思うだろう。おいしそうな草、と」。草を掻(か)き分け食らう動物と、言葉とともに繁茂する人間との差異。言葉の表皮を削(そ)ぎ落とし、内在する生成力そのものへの注視が連ねられた文集である。
    ◇
岩波書店・1836円


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