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アメリカの家庭と住宅の文化史——家事アドバイザーの誕生 [著]サラ・A・レヴィット

[評者]水無田気流(詩人・社会学者)

[掲載]2014年06月15日

[ジャンル]歴史 社会

表紙画像

■「家庭を作る」行為を掘り下げる

 メディアでお馴染(なじ)みの、暮らしを美しく演出する「家事アドバイザー」。この職業には、アメリカ生活文化史との深い関わりがあったのだ。本書は、1850年から1950年にかけてアメリカで家事アドバイザーが扱ってきた文化的テーマを詳解する。
 18世紀末、アメリカ人は生活の知恵を英国からの輸入頼みではなく、独自に開発し始めた。背景には、白人中産階級の人口増加と女性読者層の増大があげられる。やがて19世紀中期から後期にかけて、家事アドバイザーは女性向けの小説や料理本の系譜を発展させ、家庭生活に関するアドバイスという分野を確立させていく。この時期家事アドバイザーは、家庭・女性・キリスト教の間の理想的な関係性を強調した。日常的に繰り返される家事に信仰心や愛国心の表現を盛り込むことにより、世界各国から集められた人々は、生活感情から「アメリカ人」になっていったのだ。
 20世紀に入ると、宗教から科学へと権威の基盤は移る。合理的で衛生的な家事の理念はやがて「アメリカ化」と結びつき、移民の教化に活用されていく。家事アドバイザーたちは、家庭の行動様式を変えることにより、社会を改善することができると信じた。それは弱者への慈善や啓発活動とも結びつき、ソーシャルワークへと発展した。
 筆者は述べる。「家具やカーテン、浴室備品そのものに、倫理的な特質や特徴があるわけではない」が、家事のアドバイスこそが「これらの物質に文化的な意味と特徴とを与えるのである」と。家庭を作るという行為とその文化的理想を掘り下げることは、単に女性たちの狭く私的な世界を解明することにとどまらない。それは国家的な課題や、ときに公共性の矛盾をも浮き彫りにする。その重要性は今日でも変わらない。戦後アメリカ型家庭生活を追い求めてきた私たちにとっても、誠に示唆に富む。
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 岩野雅子・永田喬ほか訳、彩流社・4536円/Sarah A. Leavitt 米ナショナルビルディング博物館キュレーター。

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