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これを語りて日本人を戦慄せしめよ——柳田国男が言いたかったこと [著]山折哲雄

[評者]赤坂真理(作家)

[掲載]2014年06月15日

[ジャンル]人文

表紙画像

■人間苦追う「経世済民」の人

 経済効率が至上となったこの国で、忘れられたのは、「経済」というまさにその語が、「経世済民(世を経〈おさ〉め民を済〈すく〉う)」の略だったことではないだろうか? 法制局参事官として「経世済民」を考え挫折した柳田国男は、未(いま)だ近代化の及ばざる山と山里に出かけ、まったく新しい学問を日本に拓(ひら)いた——民俗学。
 本書の衝撃的なタイトルは、『遠野物語』の冒頭にある「これを語りて平地人を戦慄せしめよ」から来ている。一体、山に何を見たのか? 人里から追われ、飢餓線上をさまよう山人たち。彼らの生きる様を「偉大なる人間苦」と柳田は呼んだ。著者は「人類の生存に課せられた業のような重荷」ではないかと言う。そこにあるのは仏陀(ぶっだ)のような視点でありはしないか。
 「経世済民」を離れて「経済(エコノミー)」となった活動は、獰猛(どうもう)で、私たちを呑(の)み込み、その内にいるも苦、外れるは、さらに苦。今こそ柳田国男を読み、戦慄しつつ、未来を紡ぎなおす時ではないか。そう思う。
    ◇
 新潮選書・1404円

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