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松田美佐「うわさとは何か」書評 「事実性を超えた物語」との視点

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2014年06月22日
うわさとは何か ネットで変容する「最も古いメディア」 (中公新書) 著者:松田 美佐 出版社:中央公論新社 ジャンル:新書・選書・ブックレット

ISBN: 9784121022639
発売⽇:
サイズ: 18cm/262p

うわさとは何か [著]松田美佐

 「古くて新しいメディア——うわさ」を関東大震災時の「朝鮮人来襲」説から東日本大震災時の買いだめ騒動など、事例に即して解剖していく。さらには、「口裂け女」などの都市伝説にまで分析は及ぶが、着目したいのは副題にあるとおり「ネットで変容する『最も古いメディア』」だ。
 著者は、拡散も速いが内容が文章として残ることで批判的に検討できるので短命化しやすいのではないかと指摘する。一方、記録は長く保存されるのでいったん否定されたうわさが、それを知らない人によって新たな火種になる可能性もあるという。うわさがもたらす人のつながりにも焦点を当て、うわさは「事実性を超えた物語」との視点が新鮮だ。
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 (中公新書・907円)