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小学4年生の世界平和 [著]ジョン・ハンター

[評者]赤坂真理(作家)

[掲載]2014年06月22日

[ジャンル]ノンフィクション・評伝

表紙画像

■ゲームが育む、勇気、独創、貢献

 一人のアフリカ系アメリカ人の男性が、人種差別の1950〜60年代に少年時代を過ごし、あえて白人教区の教会に粘り強く通った両親の静かな勇気を見、ヴェトナム戦争に徴兵される危機を肌身で感じ、諸国を放浪して禅などに影響を受け、帰属するコミュニティーに帰った。彼は教師となって、小学4年生を教えるのにひとつのゲームを着想・開発した。名を「ワールド・ピース・ゲーム」。そこには私たちが「アメリカ型」と思いがちな力まかせの正義はない。しかし「勝利」はある。
 何が勝利なのか? ——問題が解決され、すべての国の資産が前より上がること。
 そんなことが、可能なのか? ——可能であると、35年間のゲーム結果は言っている。それも、「問題」が起こり、状況が最も危機的に見えるときにこそ、個人の勇気が、独創が発揮され、全体が生命体のように動き出すという。大切なのは、何もない(エンプティ)スペースから創造性が現れるのを待つこと。
 「問題」とは、原発メルトダウン、ハリケーン発生、あるいは一首相が撃った大陸間弾道弾による環境破壊、などなど。「問題」の影響は一国にとどまらない。参加する誰もが、どこかの時点で、全体に貢献しない限りは「勝利」はないと気づく。不思議なことに、全体への貢献を考えた時、人は最も独創的となり、本人さえ思いもかけない素晴らしい資質を開花させる。
 私生活で仲間はずれにされるリスクを負いながらも、驚くべき方法で大国の膨張を止めた少女、自ら武器の商いをやめた武器商人役たち。勝っても暴力の連鎖に巻き込まれると気づいた少年……。戦争の最高指揮官は、戦死した兵士の親たちに、心からの手紙を書かなければならない。それを読む時、すべての参加者が敗者となる……。
 子供にも大人にも、わが国の首相と閣僚たちにもぜひ、やってもらいたい。
     ◇
 伊藤真訳、KADOKAWA・1728円/John Hunter 教師、教育コンサルタント。

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