「ビゴーを読む」書評 報道写真さながらの庶民の日常
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2014年06月29日
ビゴーを読む 明治レアリスム版画200点の世界
著者:清水 勲
出版社:臨川書店
ジャンル:芸術・アート
ISBN: 9784653040866
発売⽇: 2014/04/03
サイズ: 22cm/366p
ビゴーを読む―明治レアリスム版画200点の世界 [編著]清水勲
浮世絵に魅せられて1882(明治15)年に来日したフランス人画家ビゴー。17年間に及んだ滞在中に残した石版画・銅版画を網羅する。
一服する農民、半裸で化粧する若い娘から、男盛りの三遊亭円朝に釘付けの聴衆まで。刻まれたのは、報道写真さながらの庶民の日常だ。まだちょんまげと洋髪が混在する時代のこと、威圧感のあるカメラなど向ければ、かえってその飾らない表情は逃していたかもしれない。
2人がかりで早桶(はやおけ)を担ぐ弔いの様子や、遊郭の花魁(おいらん)の気高い表情など、落語を通しておぼろげに想像していた遠い風景も、シャッターのような画家の目を経由してリアルに迫ってくる。
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(臨川書店・4860円)