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神や仏に出会う時―中世びとの信仰と絆 [著]大喜直彦

[評者]三浦しをん(作家)

[掲載]2014年06月29日

[ジャンル]歴史

表紙画像

■信仰が身近にあった時代の息吹
 
 日本の中世を生きた人々は、神仏をどうとらえていたのか。どのような形で、日常のなかに信仰があったのか。文献だけではなく、絵や言い伝えなどからも迫った本。
 『平家物語』や謡曲を読み解き、異界(神仏の世界)の時間は、人間界の時間よりも遅く流れる、と当時の人々が考えていたことが判明するくだりは、なるほどと思う。精巧な時計がない時代の時間感覚に思いを馳(は)せるのは刺激的だし、実は現在の身体的・心理的時間感覚と通じる部分があるのだなと気づかされた。
 檀家(だんか)制度が確立する江戸時代以前に、僧侶と信者がどう結びついていたのかがわかるのもおもしろい。交通手段も通信網も限られていたにもかかわらず、お坊さんは広範囲をマメに歩き、信者の家を訪ねたりお葬式をあげたりしている。そういう宗教者の存在は、民衆にとってどんなに心強かったことだろう。
 信仰が身近にあった時代の息吹を知り、現代の信仰の在り方をも考えることができる好著だ。
    ◇
 吉川弘文館・1836円

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