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みそ汁にも気象学があったとは

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2014年07月06日
雲の中では何が起こっているのか 雲をつかもうとしている話 (BERET SCIENCE) 著者:荒木 健太郎 出版社:ベレ出版 ジャンル:自然科学・環境

ISBN: 9784860643973
発売⽇: 2014/06/23
サイズ: 19cm/343p

雲の中では何が起こっているのか [著]荒木健太郎

 雲をつかむといえば、物事が漠然としている様子をさすが、気象学の最前線ではまさに雲をつかもうとする研究が進む。その全容がわかりやすく説かれる。著者が所属する気象庁の気象研究所には「雲生成チャンバー」という装置がある。内部の気温と気圧を制御して高度25キロまでの大気の状態を再現し、対流圏内の雲はすべて作れる。
 章末のコラムも楽しい。湯気の立つみそ汁に火のついた線香を近づけると、湯気が白く濃くなる。線香から発生した微粒子が雲凝結核になるからだ。一方、みそ汁の中では表面と下層に温度差があるので、上昇流と下降流が規則的に並び、積雲の内部と同じセル状対流が見られる。みそ汁にも気象学があったとは。
    ◇
(ベレ出版・1836円)