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万葉集と日本人 読み継がれる千二百年の歴史 [著]小川靖彦

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2014年07月06日

[ジャンル]歴史

表紙画像

■時代が息吹を与えた「巨人」

 本書を読み進めるうちに、私たちは万葉集を擬人化して考えればいいのか、と気づく。1200年の生命を保つ「巨人」はどのような形で誕生したのか、どういう器官を持っているのか、いかなる歴史上の人物が関心を持ち、生命力を維持してきたのか、真の万葉集とは何を指すのか。
 万葉集そのものはまだ「かな」がない時代に生まれた。大伴家持によって20巻、約4500首から成る形にまとめられた。かなの登場で村上天皇の命により訓読化する経緯や、この巨大な「国典」に惹(ひ)かれる紀貫之や菅原道真、紫式部、清少納言、藤原定家、鎌倉武士、江戸時代の賀茂真淵、明治の佐佐木信綱など多くの人物が次々と新しい息吹を与えたという。著者は平易に、豊富なエピソードで、この書の重みを伝える。
 いつの時代にも読まれるだけに一部が意図的に利用される危険もあった。いかに読むべきか、「理想の〈古代〉」と見る思考を捉え直す必要があるとの提言は貴重だ。
    ◇
 角川選書・1728円



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