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エピジェネティクス 新しい生命像をえがく [著]仲野徹

[評者]佐倉統(東京大学大学院情報学環長・科学技術社会論)

[掲載]2014年07月06日

[ジャンル]科学・生物

表紙画像

■メカニズムと実例わかりやすく

 生命科学領域で注目を集めているエピジェネティクスについての、格好の入門書。
 エピジェネティクスとは、遺伝子(DNA)の塩基配列は変化しないけれども、生物の形や生理などの表現型に安定的な変化がもたらされる現象である。DNA情報のどこを読むか、その制御の仕方が変化し、それがある程度安定して維持されるために生じる。
 本書には、そのメカニズムと実例が分かりやすく紹介されている。遺伝子名や物質名がたくさん出てくるところが難しければ、そのへんは飛ばして先に進もう。
 実例は、アサガオの品種改良やネズミ類のつがい行動の変化など、そして人間の病気と続く。生活習慣病もエピジェネティクスかもしれない。
 しかし、エピジェネティクスは生命観を根底から変革するものではないと著者は釘を刺す。斬新な現象を記述しながらも、手綱をきちんとしめるのが清々(すがすが)しい。この人の書くものなら信頼できる——そう確信できる筆致である。
    ◇
 岩波新書・842円



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