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谷川雁——永久工作者の言霊 [著]松本輝夫

[評者]杉田敦(政治学者・法政大学教授)

[掲載]2014年07月13日

[ジャンル]人文 社会

表紙画像

■闘争から教育へ、ひそむ一貫性

 筑豊の炭鉱で闘争を組織し、「原点が存在する」「連帯を求めて孤立を恐れず」など、鮮烈な言葉を放った谷川雁。彼の文化活動「サークル村」は、全共闘や石牟礼道子らにも強い影響を及ぼした。
 しかし、谷川はその後、闘争をやめて東京で子ども向け語学教育会社の経営に携わる。それは「転向」だったのか。谷川と出会い、彼の会社で働き、自らも経営者となった著者は、彼の生涯にひそむ一貫性を描き出す。
 主婦が子どもを教育する集団を「パーティ」(党派の意味もある)と呼んだだけではない。希代のアジテーター谷川が古事記や宮沢賢治に取材して書いた教材に、子どもたちは熱狂した。教育が本来アジテーションであるとすれば、それも自然な流れだったのかもしれない。
 あえて問えば、労働者、女性など、弱い立場の人びとへの「工作」につきまとう「権力性」を谷川はどこまで意識していたのだろうか。謎の人、谷川雁に迫る労作である。
    ◇
 平凡社新書・950円

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