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SFを実現する 3Dプリンタの想像力 [著]田中浩也

[評者]佐倉統(東京大学大学院情報学環長・科学技術社会論)

[掲載]2014年07月20日

[ジャンル]科学・生物 社会

表紙画像

■社会の凝りや澱がほぐされる

 タイトルの「SF」は、通常の「サイエンス・フィクション」に、「ソーシャル・ファブリケーション」という新しい意味がかけられている。社会を組み換える、鋳掛け直す、というニュアンスである。
 3Dプリンターの出現は、情報だけでなく、モノの遠距離伝送も可能にした。設計情報を送って、向こうでそれを打ち出せばよいのだ。
 そうすると、送られてきた情報をそのまま使うのではなく、地域や状況に合わせて修正し、使いこなしていく作業が自然に始まる。今までにはなかった人と人のつながりが出てくる。その社会に溜(た)まっている「凝り」や「澱(おり)」が、少しずつほぐされていく。これが、著者の目指す「SF」。この本には、そんな実例が、たくさん紹介されている。
 新技術の負の側面についても触れた方が、読者はより身近な出来事として受けとめやすかったかもしれない。
 読み終わったとき、未来は明るいと確信できて、前向きな気持ちになれる本だ。
    ◇
 講談社現代新書・907円


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