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読書礼讃 [著]アルベルト・マングェル

[評者]吉岡桂子(本社編集委員)

[掲載]2014年07月27日

[ジャンル]政治 人文

表紙画像

■読むことの意味、自らの人生

 博覧強記な愛書家と世界の本の虫たちが慕うマングェルの39のエッセー集。各章の扉におかれたルイス・キャロルの「アリス」からの引用とさし絵が「読書道」へと誘う。
 原題は「A Reader on Reading」(読書入門)。ボルヘス、セルバンテス、ダンテなどの物語を通じて、読むことの意味と「私」を語る。『図書館 愛書家の楽園』や『読書の歴史 あるいは読者の歴史』に比べて、アルゼンチンのユダヤ系家庭に生まれた著者の半生が身近に感じられる。
 イスラエル大使も務めた外交官だった父は軍事政権下で逮捕され、自身は大学生で故国を離れた。のちに政治弾圧による友人の死と恩師の裏切りを知った衝撃や専制への怒り、文学に対する期待をつづる章の強い言葉が印象深い。
 読みこむことで得る内省と疑問は、社会への反抗と変化への希求につながりかねず、権力にとって「危険な企て」と言う。ならば、もっと読まなければ。
    ◇
 野中邦子訳、白水社・4104円


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