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白熱講義 これからの日本に都市計画は必要ですか [著]蓑原敬ほか

[評者]隈研吾(建築家・東京大学教授)

[掲載]2014年08月10日

[ジャンル]社会

表紙画像

■縦割り崩れた今を刺激的に

 都市計画の世界が、またおもしろくなってきた。ということは、裏を返せば、いままではつまらなかったということで、その裏の理由も、本書は明かす。
 一言でいえば、日本的縦割りが、本来諸分野を串刺しすべき都市計画をつまらないものにし、機能不全に陥れていたのである。様々な縦割りのひどさに唖然(あぜん)とした。ひとつは、行政の縦割り。都市計画とは人間の生活全体をデザインすべきなのに、「農林」「公園」「道路」という名のガチガチの役所の縦割りが、人間自体を分断していた。統合的マスタープランを作らなくてはいけない法律があっても、内実、マスタープランは団子の細い串でしかなく、実際の計画は道路団子とか公園団子などの、ジューシーで利権たっぷりの団子に委ねられていたのが、戦後日本の寒い姿だった。
 もっと寒かったのは、開発型、計画主義型、グローバリズム型などのイケイケの都市計画と、保存型、まちづくり型、非計画型の草食系都市計画との縦割り。2派が不毛な議論を続け、都市をつまらなくしてきたとも指摘される。
 これらの戦後的縦割りが、今崩れつつあるナマな状況を本書は伝える。縦割りの裏のエンジンであった開発圧力、不動産圧力自体が消滅したからである。その結果、日本の都市は一種の無重力状態にあり、やがて、無重力が世界を覆うことはまちがいなく、日本がモルモットになる。拡大するスプロール都市から、虫食いだらけのスポンジ都市への転換という一大ドラマが日本をおそっているのである。
 本書はこのスポンジに挑戦する「今の都市計画」を刺激的に描く。市民参加、ビッグデータ、環境テクノロジーがスポンジに挑む様子も具体的で迫力があった。60年代、開発圧力のスタートに、丹下健三を中心として都市計画ブームがあった。開発時代の終わりの今、もう一回都市に目を向けるきっかけを作る本だ。
    ◇
 学芸出版社・2376円/みのはら・けい 33年生まれ。本書は蓑原と70年代生まれの7人による研究会の記録。

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