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「インクルーシブデザイン」という発想——排除しないプロセスのデザイン [著]ジュリア・カセム

[評者]水無田気流(詩人・社会学者)

[掲載]2014年08月17日

[ジャンル]アート・ファッション・芸能

表紙画像

■多様なものを包み込む挑戦

 包摂を意味する「インクルーシブ」。この語がデザインに冠される背景には、普通のデザインが無意識のうちにはらむ排除の問題がある。著者は日本留学経験をきっかけに、この国に氾濫(はんらん)する不可思議なデザインを省察し、すべての人々を排除しないデザインを追求するに至る。それは、あらゆるエスニシティー、文化、年齢、障害の有無などを、企画から製造段階まで包み込むデザインへの挑戦である。
 とりわけ興味深いのは、障害者向けデザインへの注視だ。著者自身子どもの障害と向き合い、既存の障害者向け製品の醜さを脱却すべく奮闘した経験からこう語る。障害とは、既存の問題に対して「新たな解決の扉を開くように、素晴らしくわくわくするものである」と。また日本ではユニバーサルデザインなど、障害者への配慮を眼目とした設計は、コンプライアンス(法令順守)ばかりが重視され、「平凡で醜い」点を指摘。文化特性や協業への視点が、細やかで強い。
    ◇
 ホートン・秋穂訳、フィルムアート社・2376円

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