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「ニセ医学」に騙されないために——危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る! [著]NATROM

[評者]荻上チキ(「シノドス」編集長・評論家)

[掲載]2014年08月17日

[ジャンル]社会

表紙画像

■インチキ予防に「読むワクチン」

 「水に汚い言葉をかけると壊れた結晶になる」だの、「EM菌なるものを河川などに投入すると浄化作用がある」だの、今でも多くのニセ科学が広がっている。根拠がないにもかかわらず、科学のフリをするニセ科学。荒唐無稽のようでいて、その伝播(でんぱ)力は侮れない。
 本書が取り扱うニセ医学も、ニセ科学の一種だ。「医学のふりをしているが医学的な根拠のない、インチキ医学」であるニセ医学は、人々に無駄な努力を促し、治療機会を逃すことに加担する。時には、具体的に人の健康を損なう。
 がん治療を否定する独自理論、ワクチン有害論、医療介入を極端に避ける自然分娩(ぶんべん)至上主義、ホメオパシーや瀉血(しゃけつ)などの代替医療、米のとぎ汁乳酸菌や超ミネラル水といった怪しい健康食品など、本書ではよく聞くニセ医学が列挙されており、一つ一つに論理的な批判が加えられていく。
 ニセ医学は、近代医学を否定し、一方で高い治療効果をうたう。「この治療法を認めると、医療関係者がもうからなくなるから隠している」といった陰謀論も好む。その割には、代替医療の方が高くつきがちだ。ニセ医学はビジネスになるからこそ、後を絶たない。
 主要な学会では認められていない、波動だのなんだのといった「独自理論」を強調し、万能さをアピールする。時には、難病にも治療効果があるとうたう。こうしたパターンに慣れておくだけでも、「新種のニセ医学」に対する耐性が身に付くだろう。
 感染症には、多くの人が予防接種をして免疫力をつけることが重要だ。流言についても実はそうで、あなたが本書を読むことが、自身を助けるのはもちろんのこと、得た知識を身近な人と話すことで、他人がニセ医学をうのみにすることを防げるかもしれない。本書こそ、「健康にいい」一冊なのだ。よくわからない健康グッズを買うのをやめて、こっちを買いましょう。
 NATROM氏はネットで有名なブロガー。社会に蔓延(まんえん)する様々なニセ科学・ニセ医学について、論理的な発信活動を続けている。本業は医師であり、患者によりそうからこそ、ニセ医学に飛びつく人の気持ちを頭ごなしに否定しない。その代わりに、その矛盾を丁寧に解説し、選ぶ前に知ってもらう。インフォームド・コンセントの習慣が本書でもいかされている。
 なお、版元であるメタモル出版は、多くのニセ科学本を出版してきたが、「きちんとした内容の本も出している」と、氏を説得したという。いいセンスです。「あやしい本」を売っちゃった自覚ある書店員の方も、「きちんとした内容」の本書をぜひ、目立つ位置に置いてください。
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 メタモル出版・1490円/なとろむ 内科医。医学部卒業後、大学病院、大学院などを経て、市中病院に勤務。昭和40年代生まれの男性。ブログ『NATROMの日記』でニセ医学について発信。本書の解説はサイエンスライターの片瀬久美子。

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