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日本の色の十二カ月―古代色の歴史とよしおか工房の仕事 [著]吉岡幸雄

[評者]三浦しをん(作家)

[掲載]2014年08月31日

[ジャンル]アート・ファッション・芸能

表紙画像

■色の鮮烈さ、人の探求心と知恵

 著者は、江戸時代からつづく京都の染屋さんの五代目だ。天然染料を使って布を染めると同時に、伝統染織の研究にも打ちこんでいる。
 その成果を、素人にも親しみやすいよう、季節にわけて綴(つづ)ったエッセーが本書だ。カラー写真も多数掲載され、眺めるだけでもうっとりする。
 さらに、著者の知識が半端ない。歴史、文化、行事、植物など、語られる範囲は多岐にわたる。たとえば、徳川吉宗は染色工房を作って、古い技法を再現しようとしたとか。「へえ!」と興味を引かれるエピソードばかりだ。しかし、著者の筆致は穏やかかつ淡々として、決して知識の「ひけらかし」感はない。
 古代の庶民がどういう色の衣を着ていたのか、団栗(どんぐり)で実際に染めてみる項もわくわくする。どんな染めかたをして何色になるかは、読んでのお楽しみ。「色」というものの鮮烈さ、それを生みだす植物の懐の深さ、うつくしい色を求めつづけてきた人間の探求心と知恵のすごさを実感することができた。
    ◇
 紫紅社・2484円

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