書評・最新書評

民主党政権とは何だったのか―キーパーソンたちの証言 [編]山口二郎、中北浩爾

[評者]諸富徹(京都大学教授・経済学)

[掲載]2014年09月14日

[ジャンル]政治

表紙画像

■躓きの石となった財源問題

 本書は、民主党の政権獲得から政権転落への栄光と挫折を、インタビュー記録と編者による対談で浮かび上がらせた好著である。
 本書を貫くモチーフの一つは、政権交代の原動力となり、また躓(つまず)きの石ともなった「マニフェスト」と財源の関係である。強調されるのは、2004年岡田マニフェストから09年小沢マニフェストへの変質だ。後者では、消費増税がマニフェストから落とされ、財源面の裏付けのないマニフェストとなった。
 印象深いのは、その実現可能性に疑問をもつ議員たちも、「政権を取って無駄を切れば、財源は何とかなる」という当時の小沢代表の迫力に押され、納得してしまったとの証言である。しかし、政権を取ってみると現実には毎年、新たに約1兆円分の社会保障費が増加する一方、リーマン・ショックの影響で所得・法人税収が激減、無駄を省くだけでは予算を組めない事態に陥った。危機感をもった菅元首相は、消費増税を唐突に掲げて10年の参院選に臨んだが大敗、民主党はついに財源問題をコントロールできずに党分裂、下野へと突き進んだ。
 本書が高く評価するのが、野田政権である。大飯原発再稼働を決め、「自民党野田派」などと批判されながらも、画期的な討論型世論調査に基づき、2030年代原発ゼロへの道筋をつけた。財源面では、社会保障・税一体改革に関する三党合意をまとめるなど、理念を少しでも実現する粘り強さを発揮し、民主党政権の可能性を示したという。
 民主党の将来については、10〜15年の時間幅で考え、まずは次の衆院選で議席を3桁に戻し、さらに次の衆院選で再度の政権交代を目指すこと、そのためにはナショナリズムとビッグビジネスに傾く安倍政権としっかり対立軸を作ることが重要だと、編者の山口は指摘する。「必ず夜は明けるのです」という彼の締め言葉が印象的だ。
    ◇
 岩波書店・2592円/やまぐち・じろう 法政大学教授(政治学)。なかきた・こうじ 一橋大学教授(日本政治史)。


関連記事

ページトップへ戻る