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角田光代「笹の舟で海をわたる」書評 疎開先でのうしろめたい記憶

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2014年09月21日
笹の舟で海をわたる 著者:角田 光代 出版社:毎日新聞社 ジャンル:小説・文学

ISBN: 9784620108070
発売⽇:
サイズ: 20cm/407p

笹の舟で海をわたる [著]角田光代

 時代にあらがうことなく生きてきた64歳の左織。なぜか人生は思うように進まなかった。子供との関係はぎくしゃくし、時代に取り残されたような感覚におそわれる。幼い頃同じ場所へ疎開していた風美子との偶然の再会から40年余。不思議な縁で義妹となった風美子は、料理研究家として成功し華やかに暮らす。過度に親密な風美子と接するうちに、左織は疎開先でのうしろめたい記憶を思い出していく。
 著者は、戦中から平成までを生きた女の半生をていねいに紡ぎながら、人生の幸福や孤独、さみしさを浮き彫りにする。「因果応報ってあるのかしら」。積年の疑問に左織が見いだした答えが心をとらえて離さない。
    ◇
 毎日新聞社・1728円