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「平等」理念と政治―大正・昭和戦前期の税制改正と地域主義 [著]佐藤健太郎

[評者]諸富徹(京都大学教授・経済学)

[掲載]2014年09月21日

[ジャンル]政治 社会

表紙画像

■折衷主義の積極面浮き彫りに

 本書の対象である神戸正雄は戦前、京都帝国大学教授として財政学を講じ、戦後は京都市長や地方行政調査委員会議議長を務め、国・地方の行政事務配分に関する「神戸勧告」で名を残した経済学者だ。
 神戸は、同僚の河上肇の影響で社会主義思想に親近感を抱きながらも傾倒せず、資本蓄積の促進を通じて日本の国力伸長を願う、「折衷主義」的立場をとった。この立場は、神戸の提唱する「統一的奢侈(しゃし)税」と「財産税」構想にも表れている。
 資本蓄積への打撃を回避しつつ、高所得者層の不労所得に重課することで、経済成長と公平性を両立させる神戸の立ち位置は、やはり折衷主義と呼ばれた、19世紀イギリスにおけるJ・S・ミルのそれと重なり合う。
 折衷主義は、思想的一貫性のなさで過小評価されがちだが、本書の功績は、理想を少しでも実現しようと政策現場で奮闘する神戸の姿を描くことで、その積極面を浮き彫りにした点にあるといってよい。
    ◇
 吉田書店・4212円

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