書評・最新書評

民族浄化のヨーロッパ史——憎しみの連鎖の20世紀 [著]ノーマン・M・ナイマーク

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2014年10月05日

[ジャンル]歴史

表紙画像

■理性崩壊後の教訓を自らに課す

 「民族浄化」という語は、1992年5月のボスニア戦争の初期から使われ、そしてユーゴ内戦とともに国際法上の犯罪と同一化された。「常に暴力」を伴い、「人類の生命にかなりの損害を与え」「戦争と密接に関連している」というのである。
 20世紀の人類史が抱え込んだ、そのケースをユダヤ人、チェチェン人、ユーゴスラビアの各民族などの例を引いて詳述する。加害側としてソ連、ポーランド、チェコ、セルビア人、クロアチア人などが挙げられる。第一次大戦下の青年トルコ人運動によるアルメニア人虐殺、ヒトラーとナチスはそれを称賛し、ユダヤ人攻撃につなげる。「ジェノサイドを公式に正当化し、覆い隠した第二次世界大戦もその状況を作り」だしたとの見方に納得させられる。
 ひとたび理性や意識が崩壊したあとの具体例には言葉がない。暴力は必ず復讐(ふくしゅう)の連鎖を生んだ20世紀、私たちは本書が伝える教訓を自らに課す覚悟が必要ではないか。
    ◇
 山本明代訳、刀水書房・4860円

関連記事

ページトップへ戻る