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男色の日本史―なぜ世界有数の同性愛文化が栄えたのか [著]ゲイリー・P・リュープ

[評者]本郷和人(東京大学教授・日本中世史)

[掲載]2014年10月12日

[ジャンル]歴史

表紙画像

■正面から向き合い、真摯に分析

 あったことは感得できる。けれど、どう説明したらいいのか分からない——ということが、歴史にはよくある。その昔は中世の仏教がそうであった。八百万(やおよろず)の神々を祀(まつ)る朝廷で盛んに法会が催され、僧侶が政治的影響力をもつ。これを1970年ごろ、黒田俊雄は「権門体制論」の中でスパッと説明してみせた。
 仏教寺院を一大拠点として隆盛を見た(この点でキリスト教の教会とは異なる)男色(なんしょく)も、まさにそうしたものである。高貴な階層から庶民まで、日本人は男色を好んだ。これは疑いなさそうだ。でも、その理由は? 実態は? そこで本書の出番と相成る。
 日本史を専攻するタフツ大学教授による本書は、これまで研究者が語らなかった男色に正面から向き合い、真摯(しんし)な分析を試みる。「権門体制論」ほどの切れ味はないが、それでも私たちに、男色を論じるに当たっての確実な足場を与えてくれる。豊富な実例が収録されているので、資料集としても活用できる。
    ◇
 藤田真利子訳、作品社・3456円

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