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金井美恵子「お勝手太平記」書評 脱線の中にシビアな観察

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2014年10月19日
お勝手太平記 著者:金井 美恵子 出版社:文藝春秋 ジャンル:小説・文学

ISBN: 9784163900971
発売⽇: 2014/09/30
サイズ: 20cm/318p

お勝手太平記 [著]金井美恵子

 59歳で「はじめて結婚」したアキコさんが、50年来の女友達たちに書いた約50通の書簡。病後の消息伺いかと思うと相手の昔の駆け落ちとその後、ちらしずし製作騒動に岩波少年文庫の『小公女』と脱線に次ぐ脱線。「手紙の吸血鬼」と化して小説や映画の話題もふんだんに、著者ならではのしんらつな観察、トリビアなネタを惜しげもなく披露してくれる。「よゆう通信」「中野勉」など、著者の「目白もの」に出てくるアイテムも登場し、アキコさんを感心させたりあきれさせたり。季節を巡る手紙により、書き手と受け手の人生のそれなりの起伏が浮かび上がるのだが、それが何なのか、と言わんばかりに「太平記」はあくまでシビアだ。
    ◇
文芸春秋・2160円