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開発主義の時代へ1972—2014 シリーズ中国近現代史(5) [著]高原明生、前田宏子

[評者]吉岡桂子(本社編集委員)

[掲載]2014年10月26日

[ジャンル]歴史

表紙画像

■経済も外交も権力維持最優先

 中華人民共和国が台湾に代わって国際連合に加盟した直後から現在にいたる42年間を、本書は開発主義の時代と呼ぶ。人々の欲望をエンジンとした経済成長が共産党の統治を支え、情報統制のもとで醸成したナショナリズムを求心力としてきた。
 改革開放を権威を示すシンボルにもちいたトウ小平(トンシアオピン)から、積み上がる社会矛盾を国家の「夢」で埋めようと力む習近平(シーチンピン)まで、頂点にたつものが最も優先するのは自らの権力の維持だ。それが、経済も外交も政策選択の出発点である。「経済も社会も政治から自由ではいられない」という立場から、この時代が描かれる。
 対日政策は、政権基盤の安定をはかる「バロメーター」という。安定していれば友好的、不安定なら厳しい、と。権力を支えてきた成長にかげりがみえるいま、その行方は日本とも濃密にかかわる。
 社会主義を融通無碍(むげ)に変質させ、開発に突き進んだ次にくるのは、どんな時代か。考える発射台になる一冊だ。
    ◇
 岩波新書・842円

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