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水声 [著]川上弘美

[評者]

[掲載]2014年11月02日

[ジャンル]文芸

表紙画像

 1歳違いの姉と弟。昭和が平成に変わる少し前、二人の母親はがんで逝く。その喪失感の深さを測りきれないまま、別々に暮らしていた姉弟が10年ぶりに再び実家で暮らし出す。その前年に起きた地下鉄サリン事件の朝、弟はサリンのまかれた車両の二つ隣に乗り合わせていた。乗換駅で感じた「ざわざわとした気配」を引きずり、「遠い呼び声」を聞く。
 「死」は遠いようでいて、紙一枚隔てて隣にいる。自然な死も、理不尽な死もそれは同じだ。「二人でいるのに、二人じゃないみたいだね」と弟。「好きだけど、好きっていったい何?」と姉。追い立てるように二人を結びつける「死」の影。読後に残る寂寥(せきりょう)感が重かった。
    ◇
 文芸春秋・1512円


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