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京都に残った公家たち―華族の近代 [著]刑部芳則

[評者]三浦しをん(作家)

[掲載]2014年11月02日

[ジャンル]歴史

表紙画像

■居場所を見いだそうと奮闘

 明治になり、天皇は東京へ居を移すことになった。それに伴い、多くの公家華族が京都から東京に引っ越した。
 しかし、京都(または奈良)に残った公家華族もいた。住み慣れた土地を離れたくないとか、高齢の親を介護しなければならないとか、それぞれに理由があった。政治の中心地(東京)と地理的距離があるゆえに、彼らはなかなか官職に就くことができず、困窮のあまり犯罪に手を出すものまでいた。もちろん、貴族院議員となって東京と京都を意欲的に往復したり、貴族の文化を熱心に次代に伝えたりするひともいた。
 「京都に残った公家」が果たした役割、経済的実情や人間関係について、本書は詳細に分析論考する。狭い世界を研究対象にした本のように思えるかもしれないが、読んでみると、時代と国策に振りまわされながらも、懸命に自身の居場所を見いだそうとした人々の奮闘ぶりが伝わってくる。その姿は、いまを生きる我々とも決して無関係ではないだろう。
    ◇
 吉川弘文館・1944円


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