書評・最新書評

うつの医療人類学 [著]北中淳子

[評者]内澤旬子(文筆家・イラストレーター)

[掲載]2014年11月09日

[ジャンル]医学・福祉

表紙画像

■揺れ動く定義や原因を俯瞰する

 ここ十年ほどで誰でも罹(かか)りうる病気として知られるようになったうつ病。本書では主に国内におけるこの症状を巡る治療方法や原因、社会との関係などの歴史的変遷を簡潔にたどる。
 前近代の鬱(うつ)、神経症、神経衰弱、メランコリア、躁鬱(そううつ)病。呼び名も定義も実にあやふやで、これからも変わりゆく可能性が高いというから驚いた。
 癌(がん)のように体内に発生した異物を死滅させれば治るという明快に生物学的な病気ならば、治療方法や手段がいかに変遷しても「確実に進歩している」と思えるのだが、うつ病は違う。定義も原因も治療方法も薬も、なにもかもいまだに流動的。社会とともに症状自体も変わるようにも思え、読めば読むほどわからない病だということがわかる。
 近年、患者の立場など近視眼的に書かれたうつ病本が多く出版され話題になった。歴史を振り返り俯瞰(ふかん)する本書で、さらに理解を深めてゆく時期なのかもしれない。
    ◇
 日本評論社・2592円


関連記事

ページトップへ戻る