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京都 [著]黒川創

[評者]

[掲載]2014年11月16日

[ジャンル]文芸

表紙画像

 観光ガイドとは縁のなさそうな、京都の四つの地名を表題にした連作短編集。家庭を知らずに育った男が、一時はつかんだ家庭を手放してしまう「深草稲荷御前町」。「吉田泉殿町の蓮池」は、若年時を過ごした町の記憶を男がたどる。「吉祥院、久世橋付近」「旧柳原町ドンツキ前」と、地名はいよいよディープになり、登場する男も女も「しょうがあらへん」成り行きから逃れようとはしない、劇的でない人たち。どの編にも被差別部落の存在が、補助線のように引かれている。土地に積み重なった長い歴史の時間が現在にも流れているが、そこで生きている人間には何ほどのことでもない。ただ人が移り、街が激しく変わっていくだけだ。
    ◇
新潮社・1944円

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