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スポーツ遺伝子は勝者を決めるか?—アスリートの科学 [著]デイヴィッド・エプスタイン

[評者]佐倉統(東京大学大学院情報学環長・科学技術社会論)

[掲載]2014年11月16日

[ジャンル]科学・生物

表紙画像

■遺伝も環境も、どちらも重要

 スポーツの秋。手に汗握る熱戦の数々。だが、その勝敗や成績が遺伝子であらかじめ決まっているとしたら、ちょっと興ざめかもしれない。
 運動能力を決めるのは遺伝か環境か? この古くて新しい問題に、著者は正攻法で迫る。まずは学術論文をくまなく精査して、研究成果を総覧する。次に、興味深い研究者に直接取材をおこなう。さらに、独特の遺伝的素因を持っている世界中のアスリートたちにも、インタビュー調査を敢行する。かくして、厳密な科学研究の分厚い成果と、ジャーナリスティックな物語性を、見事に融合させた。
 遺伝的要因も環境要因も、どちらも大きな役割を果たしているという結論は、穏当で真っ当なものである。
 著者がこの領域で仕事をすることになったきっかけのひとつは、遺伝的疾患によって若くして亡くなった、高校時代の友人への追悼の念だという。いい話だ。
 翻訳も読みやすい。読書の秋にお薦めの一冊。
    ◇
 川又政治訳、早川書房・2268円

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