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知ろうとすること。 [著]早野龍五、糸井重里、非除染地帯 [著]平田剛士

[評者]荻上チキ(「シノドス」編集長・評論家)

[掲載]2014年11月23日

[ジャンル]社会 ノンフィクション・評伝

表紙画像

■「測り続ける」先にある課題

 原発事故により、大量の放射性物質が拡散した。それらがどれだけの影響をもたらすのかを知るためには、とにかく「測り続ける」ことが必要だ。空気を、水を、食品を、そして人を。そうして測った数値によって、はじめて私たちは「現状」を理解することができる。
 『知ろうとすること。』は、物理学者の早野龍五と糸井重里の対談本。早野は原発事故以降、ツイッターで積極的に情報提供してきた。初期は原子炉の状態や空間線量の情報整理を行い、その後も子どもたちの給食を測り、住民の被曝(ひばく)量データを検証するなど、調査・発信を続けている。情報が錯綜(さくそう)していたあの頃、淡々とデータを整理する早野のツイッターは、フォロワー数が急増していた。糸井の軽妙な合いの手のお陰で、とても読みやすい。
 事故直後はよくわからなかった、様々なカタカナ用語。それも時間が経つと、生活に深く関わる数値、たとえば空間や食品の線量に関しては、「だいたいこんな感じなのね」という判断をそれぞれでしてきた。「気にしかた」には幅があれど、数値は日々の中で確かに活用されている。しかし、「非除染地帯」の抱える難題は、他地域と一線を画している。
 ルポ『非除染地帯』は、除染対象から外れた地域の山や川と向き合い、数字を測り続ける人たちの姿を淡々と描いた一冊。原発事故は、生態系にも変化をもたらした。人がいなくなり、田畑や山が手入れされなくなると、害獣の活動範囲が広がった。猟師たちが地元を去り、狩猟離れが進んだ。撃った獣を食べられなくなり、出荷も不可能になった。
 「消費者目線」で気にする数値には慣れたが、生産現場や非除染地帯で起きていることを、知る機会はあまりない。「測り続ける」その先にも、まだまだ課題はあると思い知る。
    ◇
 『知ろうとすること。』新潮文庫・464円▽『非除染地帯』緑風出版・1944円。



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