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批判的工学主義の建築—ソーシャル・アーキテクチャをめざして [著]藤村龍至

[評者]隈研吾(建築家・東京大学教授)

[掲載]2014年11月23日

[ジャンル]社会

表紙画像

■既成インフラとの接続を提案

 建築設計もweb2・0型にならって、ユーザーや市民が参加できる直接民主主義型にしなければいけないという、ありがちな主張の本かと思って読み始めたら、いい意味で予想を裏切られた。建築に限らず、その手の2・0型本は溢(あふ)れているのだが、ITにおもねった感じに、がっかりさせられることが多い。
 しかし、若手建築家最強の論客で、東浩紀たちと福島第一原発観光地化計画で共働する著者は、大胆に、一線を越えて、2・0の先にいった感じがあって、すっきりした。
 web2・0は、そもそも建築(アーキテクチュア)という、一種の空間構造化作業をモデルにした、情報空間の再編成だったのだから、建築が2・0にコンプレックスを抱く必要は全くなく、堂々と建築することに開き直れというのである。しかし、昔のように大きなハコモノを、建築家の独断で作ればいいといってはいない。設計の民主化の様々な実験もとりあげている。メンテに金のかからない既成インフラに建築を接続させれば、そこにユーザー、市民の参加が自動的に誘発され、大量のコンテンツが流れ込むという提案も目をひいた。「ソフト優先」などと弱音をはかずに、しっかりと、つながった建築を作ればいいのだ。
 既成インフラの中で、著者はJRに期待をかける。駅と建築を有機的に複合させれば、2・0同様、あとは勝手にユーザーがコンテンツをアップしていくというのである。結果、福島と広島と沖縄をつなぐ国土軸と新幹線が連動し、さらに台湾からアジアへと延びれば、日本再生の新しいプラットフォームの道が開ける。戦前の「満蒙」へ延びる北西軸や、田中角栄の列島改造の北西論を90度回転させた希望の南西軸で、これぞ「列島改造論2・0」だとまで、いい切った。3・11後の暗い建築界に、一石を投じるのは間違いない。
    ◇
 NTT出版・1944円/ふじむら・りゅうじ 76年生まれ。建築家。著書に『プロトタイピング』ほか。


 


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