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トリュフォー—最後のインタビュー [著]山田宏一、蓮實重彦

[評者]佐々木敦(批評家・早稲田大学教授)

[掲載]2014年11月23日

[ジャンル]社会 ノンフィクション・評伝

表紙画像

■映画愛に満ちた会話の応酬

 フランソワ・トリュフォーは、一九八四年に五十二歳の若さで亡くなった仏の映画監督。ゴダールやシャブロルと同じくヌーヴェルヴァーグの一員であり、没後三十年となる今年、日本でも映画祭が行われ、長編第一作『大人は判ってくれない』以来、監督の分身として度々主演を務めた盟友/名優のジャン=ピエール・レオーが来日を果たした。
 「最後のインタビュー」とあるのは、八二年、トリュフォーが何度目かの来日を果たした際、編者二人がじっくりと時間をかけて、この類い稀(まれ)なる映画作家のフィルモグラフィーを通覧するべく臨んだ会話が、本書の大半を占めているからだ。そこに、初めて三人が語らった七九年のインタビューと、遺作となった『日曜日が待ち遠しい!』についてパリで山田、蓮實両氏別々に行われた会話が添えられている。
 シネフィリー(映画愛)という言葉がある。映画を観(み)ることに身も心も囚(とら)われたさま。本書の二人の聞き手は、日本におけるその先駆的かつ代表的な存在である。山田とトリュフォーは長年の友人でもあり、深い理解と共感に満ちたその関係は何冊もの本に刻印されている。蓮實の映画批評の尖端(せんたん)は、常に無償で豊饒(ほうじょう)な愛に支えられている。そんな二人が、シネフィリーが嵩(こう)じて監督となり、シネフィリーを抱えたまま映画を撮り続けた人物に投げかける問いと、リラックスしながら自作のエピソードを次々と開陳する答えの応酬は、滅法(めっぽう)面白い。初期短編からレオー扮する「アントワーヌ・ドワネル」連作、映画狂映画『ピアニストを撃て』『アメリカの夜』、純愛映画の名作『突然炎のごとく』『アデルの恋の物語』『緑色の部屋』等々、一作ごとに観直しながら、少しずつ読み進めたくなってくる。かつて批評家時代のトリュフォーがヒッチコックに対して行ったインタビュー本『映画術』と並ぶ、歴史に残る名著である。
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 平凡社・3240円/やまだ・こういち、はすみ・しげひこ 『定本 映画術』『わが人生・わが映画』などを共訳。


 



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