「ナパ—奇跡のぶどう畑」書評 父と息子、成功と煩悶の記録
評者: 内澤旬子
/ 朝⽇新聞掲載:2014年11月23日
ナパ奇跡のぶどう畑 第二の人生で世界最高のワイナリーを造りあげた〈シェーファー〉の軌跡
著者:ダグ・シェーファー
出版社:阪急コミュニケーションズ
ジャンル:エッセイ・自伝・ノンフィクション
ISBN: 9784484141176
発売⽇:
サイズ: 19cm/384,9p
ナパ—奇跡のぶどう畑 [著]ダグ・シェーファー、アンディ・デムスキィ
カリフォルニアのナパヴァレー。有名なワイン生産地だ。本書はナパヴァレーがまるで無名だった1970年代初頭、50歳を前に脱サラして土地を買い、ブドウを植え、ワインを作り始めた父と、後を継ぎ世界最高のワイナリーに高めていった息子との二人三脚の記録。
勤勉さと慎み深さや家族愛を美徳とした、企業人が好みそうなファミリービジネス成功譚(たん)でありつつ、無の状態からワインという廉価にも高額にもなりうる商品をどう作って売るかの煩悶(はんもん)、著者のワイナリーだけでなくナパヴァレー全体がブランド化してゆく様子が、分かりやすくかつ興味深く描かれる。
土地の風土に合ったぶどうの美味(うま)みを生かして醸造する。それだけのことがいかに大変か。蛇足であるが評者はワインの膨大な蘊蓄(うんちく)が苦手で何も覚えずにきたが、本書を読み終え、何故膨大になるのかを理解し、ブドウ品種の名前も覚えた。退屈しないワイン入門書としてもおすすめ。
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野澤玲子訳、阪急コミュニケーションズ・2160円