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世界内政のニュース [著]ウルリッヒ・ベック

[評者]水無田気流(詩人・社会学者)

[掲載]2014年11月30日

[ジャンル]社会

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■同時代を記録する賢人の視線

 『危険社会』で、現代社会の特性を、富と同時にリスクも大量に生み出す社会と論じ注目を集めた社会学者による、同時代の観測記録。新聞掲載コラムを中心に、近年の多層な世界の切断面が躍る。「世界内政」とは、政治理論や規範的な哲学の構想ではなく、今なお強固な国民国家の境界線を越境する「あるがままの現実」と、著者は述べる。それは、グローバル化の名の下に一括(ひとくく)りにされる抽象的な視点からではなく、「下からのモグラのような視点で発見され解明されなくてはならない」と。
 切り抜かれていくのは、グローバル化と貧困問題、欧州の政情、エコロジーやエネルギー問題の指し示す課題……。マツタケの輸入から国境を超えた代理母や臓器売買にいたる生命の部品化まで、私たちは「外部」なき世界に生きているのだ。「互いの距離は益々(ますます)小さくなり、互いの無理解が益々大きくなる」時代のただ中で、危機と可能性の双方に目配りする、賢人の視線に同期してほしい。
    ◇
 川端健嗣・ステファン・メルテンス訳、法政大学出版局・3024円

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