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江戸時代の医師修業 学問・学統・遊学 [著]海原亮

[評者]本郷和人(東京大学教授・日本中世史)

[掲載]2014年11月30日

[ジャンル]歴史

表紙画像

■地域の「医界」に育てられた

 江戸幕府は医療に責任を持たなかった。その働きは各地の藩に委ねられ、いくつかの藩は医師を育てるシステムを作った。だが、それは機能しなかった。システムは中だるみの状態を呈し、円滑な医師の供給は実現しなかった。
 では、規制のないこの時代、誰でも医師になれたのか? そうではない、と筆者はいう。地域に根ざした医師のコミュニティー、「医界」が次世代の医師を育てたのだ。
 医師を志す者は日々の勉学に励む。学が成らなければそこで退場。医界に認められた者だけがその後援を受け、師を求めて遊学に旅立つ。京や大坂などで修業の日々を送り、名の知れた学統に連なり、新しい医学を郷里に持ち帰る。かくて彼は医界に一定の位置を占めることになる。
 本書は医師になるための研鑽(けんさん)を、史料を駆使して解き明かす。お上のシステムより人。人の熱意こそが、修業をやりとげるカギになる。それは現代も江戸時代も変わらぬようで、微苦笑を禁じ得なかった。
    ◇
 吉川弘文館・1944円

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