革命のつくり方 台湾ひまわり運動――対抗運動の創造性 [著]港千尋

[評者]吉岡桂子(本社編集委員)  [掲載]2014年11月30日   [ジャンル]社会 

■閉じこめられていた声を解放

 香港で抵抗の雨傘がひらく半年ほど前、台湾には見事なひまわりが咲いていた。
 台北で3月18日夜から23日間、日本でいえば国会議事堂にあたる立法院が学生たちに占拠された。中国とサービス業を開放しあう経済協定の強行審議に抗議したものだった。非暴力を貫いた運動は、議場中央にかざられた一本のひまわりが象徴となって「太陽花(ひまわり)運動」と呼ばれる。
 著者は、群衆や記憶などをテーマに、1980年代からブラジルや欧州など各地のデモや集会の現場を歩いてきた。本書は、3月末の5日間、台北の議場や路上で「人間、モノ、言葉」を取材、撮影し、思索した記録である。
 市民にまで広がった運動を考える視点を、中国との政治、経済や感情の問題だけに閉じこめない。「今日の革命とは代表制の限界を明らかにし、別の政治のつくり方を考えること」として、人々が街に出て、声をあげる意味と可能性を語る。
 その「つくり方」を、黒箱(ブラックボックス)、議会、ひまわり、配置図など21のキーワードで分解し、解説する。議場の占拠は、政治の「黒箱」を壊し、言葉を取り戻すきっかけとなった。「閉じこめられていた声を解放し、共鳴を生み出してゆく。そこから政治は始まる」
 著者のレンズがとらえた運動の場は、現代芸術のギャラリーのようだ。
 扇風機をロープでしばって積み上げたバリケード、黒いTシャツにはえる黄色いヒマワリ、「自由民主」という文字と握りこぶしを描いた黒白の木版画、読み手の想像力をそそる大きな空白をもうけた手作り新聞……。デジタルな表現に、ユーモアや伝統文化が共存する。台湾の市民運動の蓄積をも示す。
 民主主義のあり方を模索する動きが、日本や中国を含めた東アジアで共振する日はくるのか。「ひまわり」の先が気になる。
    ◇
 インスクリプト・2376円/みなと・ちひろ 60年生まれ。写真家・評論家。『ヴォイドへの旅』など。

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