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スクールセクハラ なぜ教師のわいせつ犯罪は繰り返されるのか [著]池谷孝司

[評者]荻上チキ(「シノドス」編集長・評論家)

[掲載]2014年11月30日

[ジャンル]教育 社会

表紙画像

■生徒らの性被害、丹念に取材

 スクールセクハラという言葉を知ってほしい。「学校で起きる性被害」のことだ。わいせつ行為で処分される教師の数は毎年、100人を超える。これでも、氷山の一角だろう。「加害が認定され、対応が行われたケース」だけで数百件あるというのだから。
 ただでさえ性被害は、なかなか他人に相談しがたいという実情がある。被害を口にするのも苦痛である上に、適切な対応がなされるかは確実ではない。「相手に報復されるのではないか」「周囲から自分が責められるのではないか」「家族に迷惑をかけるのではないか」と苦悩し、一人でトラウマを抱えてしまうという状況に陥りがちだ。
 児童の場合はなおさらで、しかも相手は教師なのだ。自分の成績を評価し、毎日顔を合わせなくてはならない大人を、子どもが告発するというのがどれだけ難しいか。被害者は沈黙を強いられる一方で、加害者は今でも教育現場に携わり、新たな被害者を生んでいるかもしれない。
 一部の生徒を狙い撃ちしたセクハラの場合、他の生徒や親が「そんな先生ではない」と擁護することもある。セクハラが部活動のしごきの一環になっている場合、それが伝統だと信じられていることも。女子生徒だけでなく男子生徒も被害者になりうるし、勇気を出して告発しても、心無い言葉が2次被害をもたらすことがしばしばある。
 本書は、こうした典型的な事例を丹念に取材することで、スクールセクハラの構造的問題点を浮き彫りにしたルポルタージュ。うんざりするようなケースばかりで、正直に言えば、読んでいて不快感しかない。本書で告発している元生徒たちは、この何倍もの苦痛を味わったのだろう。子を持つ親、教育に携わる者を中心に、全ての人に読んでほしい。こうした事例を再生産しないために、「これは社会問題だ」という認識が共有されなくてはならない。
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 幻冬舎・1512円/いけたに・たかし 65年生まれ。共同通信記者。共著に『ルポ 子どもの貧困連鎖』など。

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