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〈報道写真〉と戦争―一九三〇—一九六〇 [著]白山眞理

[評者]吉岡桂子(本社編集委員)

[掲載]2014年12月21日

[ジャンル]歴史

表紙画像

■国家と写真家たちの距離

 本書は、満州事変で始まった1930年代から戦争の影をひきずる60年代まで、理想と現実に揺れつつも時代と社会に寄り添った写真家たちの物語である。名取洋之助、木村伊兵衛、土門拳らの生きざまを通じて、写真と権力、人々との距離をはかりながら、歴史のすきまをうめていく。
 数枚の組み写真と短い説明で情緒に訴える「報道写真」は、戦中の激しい宣伝戦で報国の道具として活用された。写真家は、たんに国家にからめとられた被害者とは描かれていない。多くは「良い写真を撮りたい」という欲求を、時勢にのって実現させてもいた。だが、戦争責任は総括されないままだという。
 時の「クライアント」への順応性は、占領期も戦後も共通する。著者はそれを責め立てず、写真資料や公文書から引き出した史実を積み上げ、突きつけていく。そして、失敗や挫折は知に変換されたのか、と問う。メディアに「報国」を求める声が響き始めた今に向けて。
    ◇
 吉川弘文館・5184円

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