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たった独りの外交録―中国・アメリカの狭間で、日本人として生きる [著]加藤嘉一

[評者]島田雅彦(作家・法政大学教授)

[掲載]2015年01月11日

[ジャンル]社会

表紙画像

■「一般人」、体当たりの論戦

 外国で恥をかき捨てた日本人も多かったが、外目には自分たちがどう映るのかを学び、礼儀正しく、親切な日本人というイメージをある程度、定着させたのは民間外交に尽くした一般の人々であった。外交は何も外務省の専売特許でも、定義が曖昧(あいまい)な「国益」に奉仕することでもなく、個々の倫理や善意を発揮し、相互理解と信頼関係を築くことである。しかし、身の置き場によっては、大きな困難を伴う。そこにいる日本人が自分一人なら、その気はなくとも日本を代表させられ、誤解と偏見を増幅させる危険もある。言論統制と反日感情が逆巻く完全アウェイの中国で緊張と恍惚(こうこつ)を味わい尽くした青年の主張は、小田実の「何でも見てやろう」や江藤淳の「アメリカと私」を思い出させる。対米従属以外の選択肢を持たない日本外交の限界を超えるには、体当たりの論戦を重ねながら、個人としての正義の発揮の仕方を模索するこの青年を見習うほかない。 
    ◇
 晶文社・1620円


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