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「戦場体験」を受け継ぐということ―ビルマルートの拉孟全滅戦の生存者を尋ね歩いて [著]遠藤美幸

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2015年01月11日

[ジャンル]ノンフィクション・評伝

表紙画像

■兵士の体験を丹念に聞きとる

 1944年6月、拉孟(らもう)(中国雲南地方の要衝)の日本軍守備隊1300人と中国の正規軍4万人余との間で、100日間に及ぶ攻防戦が始まった。守備隊は9月に全滅した。
 その苛酷(かこく)な戦闘で生き残った兵士たちの体験を丹念に聞きとり、まとめているこの書には、特筆すべき3点の重い意味がある。(1)戦場体験を聞く真摯(しんし)な姿勢(2)個の証言を客観化、俯瞰(ふかん)化する検証能力(3)戦場体験(非日常)へのこだわり。この3点は聞きとりの要諦(ようてい)である。著者はまず自らの来歴を語る。客室乗務員時代にたまたま日航OBの生存兵士と知りあったのを機に、日本軍の戦史にふれる。語り継ぐ使命感に目ざめる。
 彼らの過去を現在にどう咀嚼(そしゃく)し、いかに次代につなぐかという視点で生存兵士たちの体験の表と裏(日本軍の残虐行為、将校と兵士の対立、捏造(ねつぞう)される美談など)を見つめる。著者の研究・著述の態度に敬意を表したい。ただし編集上、題名など、よりふさわしいものがあるのではとの感がする。
    ◇
 高文研・2376円


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