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アルタッドに捧ぐ [著]金子薫

[評者]

[掲載]2015年01月18日

[ジャンル]文芸

表紙画像

 大学院試験に失敗し浪人中の本間。「できれば作家になりたい」と持て余した時間に小説を書いていたが、ある日、主人公の少年が本間の「与(あずか)り知らぬところ」で死に、筆が止まってしまう。原稿用紙の上に投げ出された少年の左腕を庭に埋めようとしたとき、少年が飼っていたトカゲのアルタッドが現れる。本間はアルタッドを世話しながら、物語を紡ぐ行為とは、生きる意味とは何なのか、思索を深めていく。
 答えの出ない根源的な問いを続け、書くことと真摯(しんし)に向き合う本間は、著者自身でもあるようで好感が持てる。好物のコーンを音を立てて食べるアルタッドが実に愛らしく、日常の描写も楽しい。第51回文芸賞受賞作。
    ◇
 河出書房新社・1080円

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