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〈ルポ〉かわいい!—竹久夢二からキティちゃんまで [著]青栁(あおやぎ)絵梨子

[評者]水無田気流(詩人・社会学者)

[掲載]2015年01月25日

[ジャンル]社会

表紙画像

■権力を無効にする価値観

 今や国内はもとより、海外にも知られるようになった「かわいい」カルチャー。大正時代に竹久夢二の絵から始まり、中原淳一、内藤ルネ、田村セツコらの少女画により醸成されたこの少女文化の精神は、いかにして現代に受け継がれたのか。
 戦時中、時勢にそぐわないと排斥されつつも、かわいいものをこっそり愛(め)でた少女たちの逸話。異性からのまなざしではなく、自分らしさをかわいい価値観の中心に据えた「オリーブ」。口が描かれないことで感情を押し付けず少女たちの気持ちに寄り添うキティ。著者が注目するのは「かわいい」のはらむ権力の無効化だ。少女たちが渇望した、少女たち自身のための美意識。それは、主流文化が少女/女性たちに強いてきた規範的女性らしさを拒否するための武器であり、抵抗運動でもあった。「かわいい」が発動すれば、戦わずして戦いそのものを消し飛ばし、共感の力で互いの個性を協力に導くことも可能となる。その魅力、恐るべし!
    ◇
 寿郎社・1944円

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