「追跡・沖縄の枯れ葉剤」書評 綿密な調査に基づく告発
評者: 三浦しをん
/ 朝⽇新聞掲載:2015年02月01日
追跡・沖縄の枯れ葉剤 埋もれた戦争犯罪を掘り起こす
著者:ジョン・ミッチェル
出版社:高文研
ジャンル:社会・時事・政治・行政
ISBN: 9784874985564
発売⽇: 2014/11/01
サイズ: 19cm/254p
追跡・沖縄の枯れ葉剤-埋もれた戦争犯罪を掘り起こす [著]ジョン・ミッチェル
枯れ葉剤が入っているとみられるドラム缶が、腐食した状態で、2013年に沖縄市のサッカー場から大量に発掘された。ベトナム戦争で米軍が使用した枯れ葉剤は、基地のある沖縄にも運びこまれていたらしい。
著者はアメリカ政府に情報公開を求め、この問題を徹底的に追及する。基地で勤務していた米兵のなかには、いまも枯れ葉剤による甚大な健康被害に苦しむひとが大勢いる。ベトナム戦争当時、基地関連の仕事をしていた沖縄の人々に至っては、被害の実態把握は行われていないままだ。また、県内の米軍訓練場で枯れ葉剤が使用された形跡があるのだが、環境への影響も調査されていない。
これは、綿密な調査に基づく告発の書だ。日米両政府は、事態を直視すべきだろう。戦争は敵味方関係なく、多くのひとを長年にわたって苦しめつづける。沖縄の基地問題や戦争の非道さを、「対岸の火事」ではなく「自分のこと」として考えるためにも、必読だ。
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阿部小涼訳、高文研・1944円