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寺山修司未発表詩集-秋たちぬ [著]寺山修司 [編]田中未知

[評者]水無田気流(詩人・社会学者)

[掲載]2015年02月01日

[ジャンル]文芸

表紙画像

■滴り落ちる極彩色の抒情

 没後三十二年を経てなお色あせない、寺山修司の美学。それは舞台美術や前衛短歌などの領域を飛び越え、さまざまな表現に影響を与え続けている。本書は、寺山が十四、五歳のころノートに綴(つづ)った未発表詩集。彼の短詩型の特徴である鮮やかな言葉の切っ先は、初期から萌芽(ほうが)していたのを確信した。レイアウトや挿絵に凝った原典の写真も添付され、貴重な資料となっている。
 本作が書かれた一九五〇年代前半は、谷川俊太郎をはじめ、現在まで続く現代詩の潮流がうねりを上げていた時期と重なるが、不思議と寺山の詩にその影響はない。むしろ色彩の対照性や時間を大胆に圧縮する技法は戦前の口語自由詩に近いが、やはり一筋縄ではいかない。表題は堀辰雄『風立ちぬ』から。頁(ページ)をめくると目に飛び込むのは、「あかい笛」の鳴り響く「かなしい景色」。「魔法で話す」黒猫たちに、「裏がえしに飛」ぶ飛行機。耳を占拠する「白い風の胡弓(こきゅう)」……極彩色の抒情(じょじょう)が、滴り落ちていく。
    ◇
 岩波書店・1728円

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